為替の参加者とは何なのか
これまでの記事では為替とは何か?また、どのような取引方法があるのか?という事について解説してきました。
これまでの記事をまだ読んでいない方はこちらも参考にしてみてください。
それでは実際のところ、為替にはどんな参加者がいるのでしょうか。
今回は為替市場に参加している参加者のことについてお話していきたいと思います。

そもそも為替市場とは
まずは為替市場の参加者についてお話しする前に、為替市場そのものについておさらいしていきましょう。
為替市場とは、各国や企業が海外通貨の準備を行う場所であるだけでなく、個人や企業投資家が様々な国の通貨を売買して利益を生み出したり、FX(外国為替証拠金取引)の取引にも使用されています。
まさに文字通り外国の通貨を取り扱う市場の総称です。

つまり為替市場には国や企業、果ては個人まで様々な参加者が存在し、彼らの活動が通貨の価格や市場の流動性に大きな影響を与えています。
この記事では、為替市場の主要な参加者とその役割について詳しく見ていきます。
為替の参加者を理解するメリットとは?
さて、為替の参加者を知る前に、まずなぜそれを知る必要があるのか、という事についてお話します。
そもそも為替の解説者を知ったところで、何にもならないと思っている方も多いことでしょう。
為替市場の参加者の役割を知ることの大きな理由が、参加者の役割や動機を理解することで、他の参加者が何を考え取引をしているのか?という事を考える材料になる、という事です。

根本のお話として、相場の相手はどこまで行っても他の人間です。
AIが発達しようが、自動売買が発達しようが、結局のところはそのシステムを作っているのは人間で、参考にしている投資手法でさえ、元はといえば人間が生み出したものです。
また、相場の動きに影響する金利や国の内部情勢、物価の動きなども、人間の経済活動によるものがほとんどでしょう。

つまり、結果として相場とは=人間の活動の結果という事なのです。
人間が何を考え、行動しているか、それを理解することで為替相場の変動を予測し、取引をするための意思決定に役立てることができるという事が、相場の参加者を知る一番のメリットなのです。
じゃあその為替の参加者って具体的に誰なの?
というわけでここからは、もっと相手のことをよく知ろうという事で、為替市場に参加している参加者の役割や特徴をお話していきます。
中央銀行
まず初めに、一番大きな役割を持っている参加者が中央銀行です。
中央銀行は為替市場において最も影響力を持っています。

中央銀行といえば、国や地域で通貨として利用される銀行券を発行する発券銀行としての役割を持っている銀行で、日本では日本銀行が中央銀行に当たります。
通貨価値の安定を図る金融政策を司るため、通称:通貨の番人とも呼ばれます。

さて、そんな中央銀行ですが、為替市場に直接的にも間接的にも影響していきます。
例えば間接的な例でいえば、金利です。
この記事の中で、経済成長している国では金利が引き上げられることにより、通貨の需要が高まる場合がある、と解説しています。
この金利を決める役割を持つのが、中央銀行です。
先ほどの通り、金利が変動すれば、通貨の需要が変化しするためその国の通貨の価値も変動します。
こうすることで中央銀行は間接的に、為替市場に影響を及ぼしています。
また、直接的にも日本銀行は為替に影響してきます。
それが為替介入(外国為替市場介入)です。

為替介入といえば直近には2022年の9月にかなりニュースでも騒がれていたので、聞いたことがある方も多いと思います。
為替介入は財務大臣の権限において実施することとされています。
日本銀行は、特別会計に関する法律および日本銀行法に基づいて、財務大臣の代理人として為替介入を実行するのです。
為替介入は正式名称を外国為替平衡操作といいますが、状況によってはかなり大きな為替レートの変動を伴うため、一時的に為替レートが安定しない状態になる場合があります。

銀行
中央銀行と同じく、各国の大手銀行も為替市場に参加しています。

まずは大手銀行の役割として、顧客と市場を結びつけるというものがあります。
各銀行の顧客が銀行に買い注文や売り注文を出し、銀行がその注文を受けて市場に注文を出します。
こうすることで、顧客は銀行を通して相場に参加することができるようになります。
そして銀行は顧客から受けた注文を外国為替市場に流し、取引を行います。
そのため、一見顧客が取引をしているように見えても、外国為替市場ではあくまでも銀行が取引をしているのです。
こういった直接的に市場で取引をする市場への参加者はプリンシパルと呼ばれ、ほぼすべての銀行がこのプリンシパルに該当します。

つまり、我々一般の参加者から見れば、我々が直接市場に参加しているように見えますが、実際には我々の注文を受けた銀行が市場に参加することで、代理で注文を出しているにすぎないのです。
また、その注文した商品の管理も銀行が行う場合がほとんどです。
よく投資のことを勉強しているとスワップや手数料という言葉が出てきますが、このような手数料は、注文の代行や注文が約定した後のポジションを管理してもらう事に対価を支払う、いわば手間賃のようなものです。
こうして注文を銀行が取りまとめてくれているからこそ、我々は気軽に外国為替市場に参加出来ているのも事実ですし、為替市場の流動性も守られているのです。
もちろん銀行自身も、市場の参加者として独自に為替市場で取引をしていますし、高度な情報収集力や分析力を持っていますので、企業や投資家へ投資戦略を練るための情報を出したり、アドバイザーとしての役割を持っていたりなど、一般社会と為替市場との懸け橋となる役割も担っています。

企業
企業も為替市場における参加者の一人です。
企業も個人と同様、基本的には銀行を通して為替取引を行います。
企業や個人が銀行と取引をする市場を対顧客市場といいますが、企業はこの対顧客市場を利用して、為替市場に参加をしています。

企業が為替に参加する理由としては、主に海外企業との輸出入の取引が関係しています。
例えばモノを輸出する会社の場合、儲けは当然外貨で支払われます。
だからといって日本にいる従業員にドルやユーロといった外貨で給料を支払うわけにはいかないので、日本円に交換する必要があります。
こういった場合に手持ちの外貨を為替市場に売り、代わりに日本円を買うことで、日本国内での資金を得ているのです。

逆にモノを輸入する会社の場合、輸入品への対価として外貨での支払いを行う必要があります。
当然手元に円しかない状態だと取引が出来ないので、円を売って外貨を獲得し、その外貨で輸入品の代金を支払うのです。
また、その他にも所有している通貨のインフレや価格変動のリスクに応じて通貨を取引して、資産を減らさないようにリスク分散を行う目的での取引をしている場合もあります。

投資家
当たり前ですが、外国為替市場にはたくさんの投資家がいます。
我々のような個人投資家はもちろん、膨大な資金を運用して利益を得ようとする機関投資家も参加しています。
個人や機関投資家は、企業と同様に銀行との対顧客市場を利用して為替市場に参加しています。

投資家が為替市場に参加する一番の目的は、やはり通貨の売買を行いその差額を利益として受け取ることでしょう。
多くの人が為替と聞いてイメージするのが、この日本円や外貨の売買によって、儲けを得るという方法かと思います。
個人や機関の投資家たちは自分の手法や世の中の流れを見ながら投資を行います。
我々のような投資家が取引の量は企業など比較しても膨大で、取引によりトレンドと呼ばれる為替相場の流行が形成されます。
このトレンドにはその国の金融政策や情勢、金利など様々な情報が投資家により分析され、投資家がその通貨の価値が上がるのか?下がるのか?という事を判断した結果が反映されます。

つまり投資家が価値が上がる!と思えば、その通貨の価値は実際に上がりますし、逆もまたしかりなのです。
我々投資家は、相場の参加者としての役割だけではなく、相場の流れを決める役割も担っているのです。
政府機関
実は政府機関も為替市場に参加しています。

どのように参加しているかというと、主に中央銀行の項目で触れた、為替介入という方法です。
個人が銀行と対顧客市場を利用して為替市場に参加しているように、政府も中央銀行を通して為替市場に介入しています。
為替市場で最も大きな影響力を持つのは個人や機関の投資家ですが、価格の値動きに関しての影響力は、この政府による為替への介入が最も大きいです。
もちろん為替市場への絶大な影響力を持ちますので、そう頻繁に介入してくることはありませんが…
ちなみにこの為替介入に関しては、財務省ホームページに「外国為替平衡操作の実施状況」という形で発表されているので、気になる方は見てみるのもいいかもしれません。

そして政府は介入という方法だけでなく、間接的にも為替市場に影響を及ぼします。
どのように影響を及ぼすのか、それは通貨政策の策定による影響です。
国が決める通貨の政策は主に金利という形で現れますが、金利は各国の通貨の価値を決めるうえで重要な要素の1つなのです。

このように政府は金利を決めるという行為によって、間接的にも為替市場に影響を及ぼしているのです。
まとめ
と、このように為替市場には様々な参加者がいて、それぞれが自身の目的の達成や利益を得るために為替市場を利用しています。
各参加者が何をもってこの為替市場に参加しているのか?どういう意図があるのかを理解することで、なぜその値動きが起きたのか、ある程度要因を推測することもできるようになるでしょう。
当然そうなれば未来の値動きを予測するための役にも立ちますし、余計なリスクを取る必要もなくなります。

この記事の内容が、あなたは為替市場を理解するための一つの材料になれば幸いです。
それでは、今回はこの辺で。
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